2011年10月14日金曜日

PKI Day 2011に行ってきた(その2)

前回の続きで、PKI Day 2011の各セッションを見ていきたいと思います。

セッション4: 日本におけるRSA1024-SHA-1の移行に関する政策
暗号2010年問題に関して、日本国政府の取り組みが紹介されました。政府では新たな暗号方式への移行開始時期(通称:X-DAY)と、新たな方式への移行完了日(通称:Y-DAY)についての紹介でした。

現在の政府の方針では、X-DAYは2014年度開始、Y-DAYは未定(今後、X-DAYの様子をみて検討)となっています。なんだか微妙に先送りされちゃっただけのような気もしますが、無理のないスケジュールを考えると、これくらいが丁度よいのじゃないかと思えてきました。

セッション5: 最新の欧州PKI事情
AdES (Advanced Electronic Signature) 仕様関連を中心に、EUでの仕様策定の状況についてのお話がありました。

AdES関連の仕様はEUのESIが中心となって策定されました(日本もたくさん貢献しています!)が、EC指令460を受けて、仕様の軽量化と見直しが入るそうです。公演で面白かったのは、"should"とか"may"とかの「あやふやな記述はやめようよ」という点でした。これによって、今までオプション扱いだった(?)一部の規格が、必須扱いになるようなこともありそうです。国内の長期保存関連の実装も対応が必要になるかもしれません。

あと、個人的に気になったのは、現在策定中の書留電子メール (REM: Registerd e-mail)です。ちゃんと調べてないのですが、電子メールにエビデンス情報を付記することによって、メッセージの受理とか拒否とかを電子署名的に残せるようにする規格だそうです。最近のビジネスは電子メールに依存しているので、PKIが普及するためのキラーアプリになる可能性もあるような気がします。

セッション6: パネルディスカッション「番号制度とPKI」
今回のパネルディスカッションでは、企業における番号制度に着目してのセッションでした。国民番号制度を議論しようとすると、個人情報の保護の話が出てきてしまって、話がこじれてしまうことがあります。今回はそういった話をスルーするために、企業に番号を割振る「企業コード」にフォーカスしてのディスカッションでした。

社印の代わりとして電子署名を使う場合に、社長が毎回ICカードを持ちださなきゃならないのか?等、現行の法律面との関連を踏まえての議論がありました。その他にも、政府が管理する「企業ディレクトリ」みたいなものがあったら超便利だし、個人番号の方と連携すれば更に便利になるという話もありました。

ちなみに、9/25に民主党は「共通背番号制度」法案を臨時国会に提出しないことを決めました。たしか、いわゆるマイナンバー制度は2015年に稼働開始のスケジュールだったような気がしますが、スケジュールが遅延するかもしれません。

最後に
私が最初にPKI Dayに参加したのは4年前になります。4年前と比べると、PKIの技術自体はあまり変化はありませんが、PKIを取り巻く環境は大きく変わってきています。クラウド技術は普通に利用されるようになってきましたし、スマートフォンも一気に普及しました。

こういった変化は、インターネットが既にインフラとして我々の生活に完全に定着し、十分利用に耐えるものになってきたためだと思います。しかし、インターネットは情報漏えいや成りすましなど、インフラとしては信用に欠ける部分があるのも事実であり、現段階では我々利用者はインターネットを信頼できない(もしくは信頼性の低い)インフラとして扱わなければなりません。

今後はPKIを含む暗号技術の重要性は、インターネットが社会インフラとして利用されることが多くなるにつれ、増加していくのは確実です。4年間の変化を考えると、PKIが真の社会インフラとして必須とな日は、意外と近いのかもしれません。

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