前回の続きで、PKI Day 2011の各セッションを見ていきたいと思います。
セッション4: 日本におけるRSA1024-SHA-1の移行に関する政策
暗号2010年問題に関して、日本国政府の取り組みが紹介されました。政府では新たな暗号方式への移行開始時期(通称:X-DAY)と、新たな方式への移行完了日(通称:Y-DAY)についての紹介でした。
現在の政府の方針では、X-DAYは2014年度開始、Y-DAYは未定(今後、X-DAYの様子をみて検討)となっています。なんだか微妙に先送りされちゃっただけのような気もしますが、無理のないスケジュールを考えると、これくらいが丁度よいのじゃないかと思えてきました。
セッション5: 最新の欧州PKI事情
AdES (Advanced Electronic Signature) 仕様関連を中心に、EUでの仕様策定の状況についてのお話がありました。
AdES関連の仕様はEUのESIが中心となって策定されました(日本もたくさん貢献しています!)が、EC指令460を受けて、仕様の軽量化と見直しが入るそうです。公演で面白かったのは、"should"とか"may"とかの「あやふやな記述はやめようよ」という点でした。これによって、今までオプション扱いだった(?)一部の規格が、必須扱いになるようなこともありそうです。国内の長期保存関連の実装も対応が必要になるかもしれません。
あと、個人的に気になったのは、現在策定中の書留電子メール (REM: Registerd e-mail)です。ちゃんと調べてないのですが、電子メールにエビデンス情報を付記することによって、メッセージの受理とか拒否とかを電子署名的に残せるようにする規格だそうです。最近のビジネスは電子メールに依存しているので、PKIが普及するためのキラーアプリになる可能性もあるような気がします。
セッション6: パネルディスカッション「番号制度とPKI」
今回のパネルディスカッションでは、企業における番号制度に着目してのセッションでした。国民番号制度を議論しようとすると、個人情報の保護の話が出てきてしまって、話がこじれてしまうことがあります。今回はそういった話をスルーするために、企業に番号を割振る「企業コード」にフォーカスしてのディスカッションでした。
社印の代わりとして電子署名を使う場合に、社長が毎回ICカードを持ちださなきゃならないのか?等、現行の法律面との関連を踏まえての議論がありました。その他にも、政府が管理する「企業ディレクトリ」みたいなものがあったら超便利だし、個人番号の方と連携すれば更に便利になるという話もありました。
ちなみに、9/25に民主党は「共通背番号制度」法案を臨時国会に提出しないことを決めました。たしか、いわゆるマイナンバー制度は2015年に稼働開始のスケジュールだったような気がしますが、スケジュールが遅延するかもしれません。
最後に
私が最初にPKI Dayに参加したのは4年前になります。4年前と比べると、PKIの技術自体はあまり変化はありませんが、PKIを取り巻く環境は大きく変わってきています。クラウド技術は普通に利用されるようになってきましたし、スマートフォンも一気に普及しました。
こういった変化は、インターネットが既にインフラとして我々の生活に完全に定着し、十分利用に耐えるものになってきたためだと思います。しかし、インターネットは情報漏えいや成りすましなど、インフラとしては信用に欠ける部分があるのも事実であり、現段階では我々利用者はインターネットを信頼できない(もしくは信頼性の低い)インフラとして扱わなければなりません。
今後はPKIを含む暗号技術の重要性は、インターネットが社会インフラとして利用されることが多くなるにつれ、増加していくのは確実です。4年間の変化を考えると、PKIが真の社会インフラとして必須とな日は、意外と近いのかもしれません。
2011年10月14日金曜日
PKI Day 2011に行ってきた(その1)
PKI Day 2011に参加してきました。今回は恒例の東京ウィメンズプラザではなく、トスラブ山王での開催となりました。開催地が変更になったのは、U-Stream配信を行うための回線を確保するためだそうです。資料と公演の内容はこちらから見ることができます。
今年もいい話が聞けました。簡単に各セッションのコメントです。
セッション1: Microsoft U-Prove
マイクロソフトのID連携 (Identity Federation)に関する公演でした。今までのID連携では、個人情報等を公開してしまう恐れがあり、プライバシー保護の観点から問題があるとのこと。マイクロソフトでは、新しいID連携サービスを模索しており、U-Proveという技術に着目している。
U-ProveではIdPが個人情報を含むトークンと含まないトークンを生成し、クライアントは個人情報を含まないトークンをSPに提供することによって、プライバシー保護を考慮した認証が可能となる点が新しいそうです。ちょっと面白そうでしたので、あとで実験でもしてみようと思います。
セッション2: 楕円曲線暗号におけるPKI
楕円曲線暗号 (ECDSA) の各プラットフォームにおけるサポート状況が報告されました。検証対象となっているプラットフォームは、OpenSSL, Windows Vista, Java SE 7です。
ECDSAには鍵長以外にもいくつかのパラメータがあり、それぞれのプラットフォームで使用できるパラメータが異なります。PKIを導入する際には、設計段階において、アルゴリズムの選定と相互運用性の確認が必要ですが、今回の検証は当たりをつけやすくなって助かりました。
検証結果では、Vistaのサポートするパラメーターが少ないのは意外でした。Suite B対応の最小限のパラメータだけを実装した感じです。あと、個人的には、Windows 7の検証もあったらうれしかったです(7では使えるパラメーターがの組み合わせが増えていたような?気がします)。
セッション3: SSLにおける暗号危殆化サンプル調査の報告
毎年恒例のSSLサーバーの定点観測のお話でした。この調査報告は、金融系と政府系のSSLサーバーが使用している証明書のアルゴリズムとSSLの暗号設定について、3年間の追跡調査を行った結果を報告しています。ちょうど、2010年問題が話題になったこともあり、興味深いセッションでした。
SSL証明書では、RSA1024 / MD5がほとんど使われなくなったそうです。各SSL証明書屋さんは、数年前からMD5でハッシュした証明書の発行を止めていたので、想定通りの結果になっています。調査結果によると、95%以上のSSLサーバ証明書がハッシュアルゴリズムにSHA1を使っているとのことでした。
SSLサーバーの暗号設定は未だ改善されていませんね。共有鍵にRC4-MD5を受け付けるサーバーも多く、昨年からの変化もあまりありませんでした。おそらくSSLサーバーをデフォルトの状態で運用しているのではないかという指摘があり、まさにその通りな感じでした。
このセッションで感じたのは、暗号アルゴリズムに関する設定の難しさです。検証結果にもありましたが、ブラウザ側でも次世代のアルゴリズムをサポートしていますので、サーバー側では、そろそろ古いアルゴリズムは切り捨ててしまってもよいのではないかと思いました。
(次回に続く)
今年もいい話が聞けました。簡単に各セッションのコメントです。
セッション1: Microsoft U-Prove
マイクロソフトのID連携 (Identity Federation)に関する公演でした。今までのID連携では、個人情報等を公開してしまう恐れがあり、プライバシー保護の観点から問題があるとのこと。マイクロソフトでは、新しいID連携サービスを模索しており、U-Proveという技術に着目している。
U-ProveではIdPが個人情報を含むトークンと含まないトークンを生成し、クライアントは個人情報を含まないトークンをSPに提供することによって、プライバシー保護を考慮した認証が可能となる点が新しいそうです。ちょっと面白そうでしたので、あとで実験でもしてみようと思います。
セッション2: 楕円曲線暗号におけるPKI
楕円曲線暗号 (ECDSA) の各プラットフォームにおけるサポート状況が報告されました。検証対象となっているプラットフォームは、OpenSSL, Windows Vista, Java SE 7です。
ECDSAには鍵長以外にもいくつかのパラメータがあり、それぞれのプラットフォームで使用できるパラメータが異なります。PKIを導入する際には、設計段階において、アルゴリズムの選定と相互運用性の確認が必要ですが、今回の検証は当たりをつけやすくなって助かりました。
検証結果では、Vistaのサポートするパラメーターが少ないのは意外でした。Suite B対応の最小限のパラメータだけを実装した感じです。あと、個人的には、Windows 7の検証もあったらうれしかったです(7では使えるパラメーターがの組み合わせが増えていたような?気がします)。
セッション3: SSLにおける暗号危殆化サンプル調査の報告
毎年恒例のSSLサーバーの定点観測のお話でした。この調査報告は、金融系と政府系のSSLサーバーが使用している証明書のアルゴリズムとSSLの暗号設定について、3年間の追跡調査を行った結果を報告しています。ちょうど、2010年問題が話題になったこともあり、興味深いセッションでした。
SSL証明書では、RSA1024 / MD5がほとんど使われなくなったそうです。各SSL証明書屋さんは、数年前からMD5でハッシュした証明書の発行を止めていたので、想定通りの結果になっています。調査結果によると、95%以上のSSLサーバ証明書がハッシュアルゴリズムにSHA1を使っているとのことでした。
SSLサーバーの暗号設定は未だ改善されていませんね。共有鍵にRC4-MD5を受け付けるサーバーも多く、昨年からの変化もあまりありませんでした。おそらくSSLサーバーをデフォルトの状態で運用しているのではないかという指摘があり、まさにその通りな感じでした。
このセッションで感じたのは、暗号アルゴリズムに関する設定の難しさです。検証結果にもありましたが、ブラウザ側でも次世代のアルゴリズムをサポートしていますので、サーバー側では、そろそろ古いアルゴリズムは切り捨ててしまってもよいのではないかと思いました。
(次回に続く)
2011年9月8日木曜日
偽物のgoogle.comに対するMicrosoftの対応
DigiNotar社のSSL証明書偽装事件の続報が入りました。どうやら、*.*.comや*.windowsupdate.com等の証明書も発行されており、被害は相当なモノになっているようです(参照)。やばいことになってきましたね。
そんなさなかに、Microsoftがセキュリティアドバイザリーを改定しました(こちら)。今回の改定によると、MicrosoftはDigiNotar社の全認証局を信頼しないようにするためのパッチを公開したそうです(こちら)。
今回のパッチの影響をもう少し詳しく見てみましょう。Windowsでは、証明書を利用するためには、証明書を証明書ストアに登録しなければなりません。この証明書ストアには「信頼されていない認証局」というカテゴリーがあり、このカテゴリーに登録された証明書(と、その下位のCAが発行した証明書)は証明書の検証時に信頼されていない証明書として取り扱われます。
実際に証明書ストアを見てみましょう。Windowsの証明書ストアはcertmgr.mscを起動すると閲覧できます。パッチを当てる前の証明書ストアの「信頼されていない証明書」を見てみると、こんな感じです。(うっは、結構入ってるじゃんw)
パッチを適用後の「信頼されていない証明書」はこんな感じになります。ピンクで示した部分がパッチを適用することによって登録された証明書です。5つのCA証明書が「信頼されていない証明書」登録されました。
では、パッチを適用した状態で偽物のgoogle.comの証明書を検証したらどのようになるのでしょうか。実験してみました。(DigiNotar社のルート認証局証明書と中間認証局証明書を証明書ストアにインポートしています)。全般タブでは失効として扱われています。
パス検証のタブを見ると、本来CA証明書のCNが表示されるところに、「Untrusted」と表示されます。ちゃんと「信頼されていない認証局」として認識されるようです。
今回の事件の真相は未だ判明していませんが、PKI業界で仕事をしている身としては強い危機感を感じます。今後は認証局や登録局に対する攻撃が増えることも予想され、PKIという技術そのものに対する信頼が崩れてしまうことも考えられます。PKI業界は今回の教訓を生かしてより信頼できる体質になるべく努力を惜しむべきではありません。対策が後手になればなるほど傷は広がります。PKIが生まれて三十余年、今、PKI業界は信頼できるインフラとしての地位をかけた生存競争の時代に突入したのかもしれません。
そんなさなかに、Microsoftがセキュリティアドバイザリーを改定しました(こちら)。今回の改定によると、MicrosoftはDigiNotar社の全認証局を信頼しないようにするためのパッチを公開したそうです(こちら)。
今回のパッチの影響をもう少し詳しく見てみましょう。Windowsでは、証明書を利用するためには、証明書を証明書ストアに登録しなければなりません。この証明書ストアには「信頼されていない認証局」というカテゴリーがあり、このカテゴリーに登録された証明書(と、その下位のCAが発行した証明書)は証明書の検証時に信頼されていない証明書として取り扱われます。
実際に証明書ストアを見てみましょう。Windowsの証明書ストアはcertmgr.mscを起動すると閲覧できます。パッチを当てる前の証明書ストアの「信頼されていない証明書」を見てみると、こんな感じです。(うっは、結構入ってるじゃんw)
パッチを適用後の「信頼されていない証明書」はこんな感じになります。ピンクで示した部分がパッチを適用することによって登録された証明書です。5つのCA証明書が「信頼されていない証明書」登録されました。
では、パッチを適用した状態で偽物のgoogle.comの証明書を検証したらどのようになるのでしょうか。実験してみました。(DigiNotar社のルート認証局証明書と中間認証局証明書を証明書ストアにインポートしています)。全般タブでは失効として扱われています。
パス検証のタブを見ると、本来CA証明書のCNが表示されるところに、「Untrusted」と表示されます。ちゃんと「信頼されていない認証局」として認識されるようです。
今回の事件の真相は未だ判明していませんが、PKI業界で仕事をしている身としては強い危機感を感じます。今後は認証局や登録局に対する攻撃が増えることも予想され、PKIという技術そのものに対する信頼が崩れてしまうことも考えられます。PKI業界は今回の教訓を生かしてより信頼できる体質になるべく努力を惜しむべきではありません。対策が後手になればなるほど傷は広がります。PKIが生まれて三十余年、今、PKI業界は信頼できるインフラとしての地位をかけた生存競争の時代に突入したのかもしれません。
2011年8月31日水曜日
偽物のgoogle.comのSSL証明書が発行された件
偽物のgoogle.comのSSL証明書が発行されたそうです。事の発端はこちらのメールだそうで、問題の証明書のダウンロード先も書かれています。
この証明書の発行元となっているのは、ノルウェーのDigiNotar社の"DigiNotar Public CA 2025"の認証局です。この認証局は"DigiNotar Root CA"の下位CAとして運営されています。どんな審査をしているのか気になったので、軽くCPSでも見てみようと思ったのですが、残念ながらノルウェー語なんでさっぱり理解できなかったです(CPSはここにあります)。
既にDigiNotar Public CA 2025は偽物のSSL証明書を失効したそうなので、念のためWindows 7のCertutil.exeで確認してみました。Certutil.exeはユーザーの中間証明機関ストアに2025の証明書をインポートしてから実行しています。以下は実行結果です。長いので途中は省略しています。
PS C:temp> Certutil -verify -user .\fake_certificate.cer<<省略>>------------------------------------証明書が失効していますCert は End Entity 証明書ですリーフ証明書は失効されています (理由 =0)CertUtil: -verify コマンドは正常に完了しました。
「リーフ証明書は失効されています (理由 =0)」と出ているので、たしかに失効されています。理由=0なので、失効理由の詳細は不明です。不正な証明書のシリアル番号を含むCRLを発行できていることから、何らかのミスによって登録局による審査をスルーして発行してしまったのではないかと思われます。(※多くのCA製品では、自分が発行した証明書以外のシリアル番号をCRLに記載できない実装が多いです)
さて、気になるベンダー各社の対応ですが、MozillaプロジェクトとMicrosoftの対応は素早かったです。Mozillaプロジェクトでは、こちらのページに詳細がまとめられています。アップデートで対応とのことですが、手動でトラストアンカーから不正なSSL証明書を発行してしまったルートCA証明書を削除する手順も公開しています(こちら)。
MicrosoftもSecurity Advisory (2607712)を公開しています。Microsoftは配布しているCTL (Certificate Trust List) からDigiNotar社のルート証明書を取り除いて対応したそうです。Windowsは証明書の有効性を検証する際に、Windows UpdateのサイトからCTLを自動的にダウンロードして検証するので、このような対応となっているのですね。
一見すると、トラストアンカーからルート証明書を削除するのは妥当な対処に思えますが、実はとても影響の大きい対処方法でもあります。なぜならば、ルート証明書をトラストアンカーから削除することによって、DigiNotar社が発行した全ての証明書が信頼されない事になり、既に大量に証明書を発行している場合は、それらが全て無効な証明書として取り扱われてしまうためです。いわゆる村八分のような状態です。
以前、Comodoが不正なSSL証明書を発行してしまったときは、偽物のSSL証明書を失効するという方法が取られました。今回は、偽物のSSL証明書の失効だけでは不十分と判断し、トラストアンカーからルート証明書を削除したことを考えると、CA鍵の漏洩のような重要な問題が発生しているのかもしれません。
また、今回のネタの提供者はイラン在住でイラン政府の関与を疑っているようです。なんだか物騒な話ですが、そういった背景を加味すると、今回の対応もありえるような気がします。しばらくは目を離せないネタになりそうです。
2011年8月11日木曜日
PKI Day 2011の申し込みが始まりました
PKI Day 2011の申し込みが始まりました。今年は9/26に山王健保会館での開催となります。開催の概要と申し込みはこちら。今年は去年の半分となる120名の定員です。参加を希望する人は早目に申し込んでおいたほうがいいと思います。もちろん私も参加するつもりです。
ちなみに、PKI Dayは去年からUstreamで配信を行っているようです。今は公演の一部分(15分程度)しか見れませんが、会場の雰囲気は伝わると思います。今年は定員が減ってしまったので、インターネットで公開してもらえると助かる人も多いのではないでしょうか。
Video streaming by Ustream
ちなみに、PKI Dayは去年からUstreamで配信を行っているようです。今は公演の一部分(15分程度)しか見れませんが、会場の雰囲気は伝わると思います。今年は定員が減ってしまったので、インターネットで公開してもらえると助かる人も多いのではないでしょうか。
Video streaming by Ustream
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