2009年9月19日土曜日

HSMと秘密分散技術 (Secret Sharing Scheme)

仕事で使っているnCipherのHSMには、OCS (Operator Card Set) protected keyという、ICカードを使用した認証を行なわないと鍵を使用出来ないようにする機能がある。前々から実装に使われている理論が気になっていたので軽く調査してみた。

まずは、簡単にOCS protected keyの説明。OCS protected keyは鍵を使用する際にICカードによる認証を強制する機能だ。nCipherのHSMではOCS protected keyを作成するときに、K of Nというパラメーターを指定する。Kは認証時に必要なICカードの数を表しており、NはICカードの総数を示している。

例えば、あるOCS保護鍵を作成したときに2 of 3のパラメーターを指定したとする。この場合、その鍵を使用する際は3枚(N=3のため)のうち最低2枚のICカードによる認証をパスする必要がある(K=2のため)。カードが1枚しか無い場合は鍵を使用する事ができない。実際の用途としては、「ある書類にデジタル署名を行なうには、担当者2名による承認が必要。予備カードが1枚必要」といった用途に使用できる。

で、実際にどのような理論を用いているのか調べてみると、どうやら「秘密分散技術」 (Secret Sharing Scheme: SSSと略される)というジャンルの技術を使っているらしいことが解った。ちなみに、この分野のブレイクスルーは1979年にShamir大先生(RSAの"S"の人ね)とBlakleyと言う人が別々の論文を発表したことによって起こったそうな。Shamirは多項式補完に基づいており、Blakleyはベクトル空間に基づいているらしい。nCipherのHSMが実際にどんなアルゴリズムを使っているかは解らないが、振る舞いから推測するに、「(k, n)しきい値法」に属するアルゴリズムを使っているのは間違いなさそうだ。

理論の中身もチェックしてみたが、サッパリ解らなかった(ガロア理論とか初等整数論とか出て来ちゃってさ...orz)。でも、情報理論的安全性が確認されているらしいので安心して使っていいとのこと。

やっぱり暗号関連は真面目に勉強して行くと初等整数論にぶつかるなぁ。なんとかしないと思いつつも、手を出しにくい分野だよ。

2009年9月9日水曜日

Globalsignの「パブリックルート署名サービス」がウハウハな件

体調を崩していたので久しぶりの更新。最近はダルくてダルくてBlogどころではなかった。今は完全復活です。

さて、今回もPKIネタ。9月1日よりグローバルサインが「パブリックルート 署名サービス」というサービスを開始した。このサービスは、グローバルサインのCAが、一般の会社の社内などに設置してあるプライベートCAのCA証明書に署名を打ってくれるサービスだ。米国ではずいぶん前から提供されていたので、やっと日本でも使えると考えるとウハウハしてしまう。

で、このサービスの何が嬉しいのかというと、「自前プライベートCAがマイクロソフトのルート証明書更新プログラムでCA証明書が配布されているCAの下位CAになる事ができる」という点に尽きる。グローバルサインのルート証明書はIEの信頼できるルート証明期間の一覧に始めから入っているので、このサービスを使用したCAが発行した証明書は世界中のどのWindowsマシンでも自動的に信頼できる証明書として取り扱ってもらえる。しかも、特に発行できる証明書の制限は無さそうなので、自前のCAで個人向けの証明書やコードサイニング証明書などもバンバン発行できる。これはウハウハするでしょう。用途広すぎ。

1点だけ気になるのが、このサービスをやる事によってグローバルサインのルートCAが、WebTrust for CAの認定とMSのルート証明書の配布要件に抵触してしまい、ルート証明書の配布が行なわれなくなってしまうのではないかということ。米国ではずいぶん前から提供しているので問題はないとは思うのだが、、、うーん微妙にグレーゾーンな気がする。

たぶん下位のCAには、CP/CPSの要件やHSM (Hardware Security Module)を使った鍵の管理の義務、監査を受ける義務、サーバーの設置場所に関する要件などのそれなりのヘビーな内容が求められる可能性はある。まぁ、得られる利点を考えると納得はできるのだが、お手軽にパブリックCAを構築できるサービスであるとは言えなさそうだ。

これ、あまりにも便利すぎるので自社でも真面目に検討してみることにする。残る問題は価格だよな。課金体制がよくわからないので、実はものすごーーーく高かったりするオチがあるかもしれない。

2009年8月3日月曜日

総務省の調達公募 -- 21年度電子署名・認証業務利用促進事業(暗号アルゴリズムの移行等に関する調査研究)--

総務省が「平成21年度電子署名・認証業務利用促進事業(暗号アルゴリズムの移行等に関する調査研究)」の調達を公募している。暗号アルゴリズムの移行に関する調査の公募だそうな。興味のある方はご覧あれ。

調査のテーマは、暗号アルゴリズムの移行に関する技術面・制度面の調査、海外のGPKI関連の動向の調査、利用者による PKI 署名鍵保持の安全性に関する調査研究、の4つとなっている。全体的には暗号2011年問題と日本のGPKIの今後の動向のための基礎資料の調査と言った感じになっている。

この中で、ムムムっとなったのが、最後の「利用者による PKI 署名鍵保持の安全性に関する調査研究」だ。以下、調達仕様書より抜粋する。
本テーマでは、今後の電子署名における署名者の選択肢として、①署名者に署名鍵を持た
せ、署名者個人の管理、利用環境で署名すること、②サーバで署名鍵を保管し、署名者の指示によって
署名すること、という 2 方式における、技術面、コスト面、安全面での想定されるメリット、デメリットの調
査・分析を行う。
なるほどね。今は住基カード等では署名用の鍵はエンドエンティティが持つスマートカード内に保存しているが、それをサーバー(総務省内の?)側に保存するってことか。鍵はリモートに保管されているので、鍵を保管している組織がエンドエンティティの鍵を勝手に使う事が出来ないようにしなければならないし、適切なユーザーのみが鍵を使用できるようにしなければならない。
うーん。これは難しい。何となく実装のイメージは湧くが....うーん。サーバー側ではHSMを使うことになるだろうし....うーん。というか、ユーザーにとってのメリットって何なんだろう。というか、どんなアプリで使うんだろう。よくわからんくなったぞ。

2009年8月1日土曜日

JNSAのの情報セキュリティ市場調査報告書

JNSAが平成20年度 情報セキュリティ市場調査報告書を公開している。興味のある方はご覧あれ。

とりあえず、暗号関連だけに着目して、2008年度の動向を簡単に概要をまとめると、
  • セキュリティ業界全体の市場は7267億円程度。6.1%程度の成長率。
  • 上記のうち暗号関連市場は、381億円程度。12%の成長率。
  • 他のセキュリティ分野と比較して暗号製品の市場の伸び率が一番大きい。
でもって2009年度(予測)は、
  • セキュリティ業界全体の市場は6873億円程度。-5.4%の成長率。
  • 上記のうち暗号関連市場は、392億円程度。3%の成長率。
  • 暗号製品の市場のみがプラス成長だった。
こんな感じ。暗号業界は400億円程度で決して大きなパイとは言えないが、成長している分野だと言うのはうれしいことだ。

世間では、IT関連全体の市場が12兆円とか言われており、そのうちのセキュリティ全体の市場は7000億円で全体の6%程度。多いんだか少ないんだか微妙にわからんな。

2009年7月27日月曜日

パソコン時の姿勢とIKEAのPOANG(椅子)

長年使っていたPC用の椅子が壊れたので、IKEAに行ってPOANGというアームチェアを買って来た。買ったのはコレ。Webでは出ていないが、一番安いモデルだと7800円から購入できる。もちろん買ったのは一番安いモデル。

前々から思っていたのだが、よく言われる椅子に深く座って背筋を延ばす、いわゆる「正しい姿勢」と言うのは長時間のパソコン作業には全く適していない。長時間この姿勢をしていると、目が疲れ→画面に顔が近づく→首が疲れる→腰が疲れると言うように、頭の先からダメージが蓄積してきて長時間集中力を維持する事が難しい。

ここら辺の事情はOA家具メーカーも解っているらしく、OA家具の大手の岡村製作所では低座・後傾姿勢に対応したクルーズ&アトラスという製品を出している。低座・後傾姿勢というのは、車のシートに座っているような姿勢や歯医者で治療の際に座る椅子をイメージしてもらえればいい。足を前方に投げ出して上半身を後方に倒す。一見するとダラけているように見えるが、長時間のパソコンの作業ではこの姿勢がベストだ。

実は、私は腰痛があるので、職場では椅子を(勝手に)改造し、低座・後傾姿勢を取っている。この際に苦労したのは以下のような点だった。
  • 天井の証明が目に直接入る
    後傾姿勢では天井の照明からの光が直接目に入りやすい。蛍光灯を見続けると目が疲れるのと同じように疲労を蓄積する原因となる。できれば150cm程度の高さのパーティションがあるといい。私は段ボール箱を積み上げて壁を作った。
  • 首のサポートが無いと辛い
    ただ単に後傾姿勢をしただけでは、首に負担がかかってしまい、余計に辛くなってしまう。首が辛い場合は、後傾具合を弱く(つまり垂直に)するといい。また、背もたれの高さは一番高くすると良い。
  • 机の高さ
    後傾姿勢では、キーボードは太腿のすぐ上あたりにあった方がいい。通常のオフィス机では高さがかえられないので、椅子の高さで調節するのがいいだろう。
  • フットレスト
    後倒姿勢にはフットレストが必須となる。足だけ下になると膝の裏側の血行が悪くなってシビれてきたりする。私はちょうどいい高さの段ボールを足元に設置してその上に足を乗せている。
  • 書き物には適していない
    後倒姿勢は机の上で書き物をするのには全く適していない。パソコンの作業のみが快適に行なう事が出来る。この点に関しては、完全に諦めた。
  • 眠くなる
    リラックスしすぎて眠くなる。これはどうしようもない。

さて、肝心のPOANGの座り心地とパソコン作業との相性だが、4時間程度のPCを使った感じでは特に問題は感じられなかった。上記の職場での作業環境とは比較にならないくらい快適だ。ただし、付属のソファではお尻が暑くて汗をかいてしまうのが欠点。夏は辛いかもしれない。IKEAのPOANGはお尻が暑いのに耐えられる人ならば、コストパフォーマンスも高いのでオススメできる。